Archive for 4月, 2011

世の中にはとんでもないその道の大家がいるもので、シャーロッキアン達はその典型だろう。架空の人物をここまで深く研究し夥しい

論文を発表し続けているのだ。恐らくシェィクスピア研究以上ではないだろうか。カノン(聖典)60編、せいぜい鞄に入る量でしかな

いが、研究書なら部屋一杯になるだろう。ぼくは純粋のシャーロッキアンではないが、なぜか子どものころより強く惹かれ何回再読し

ただろう。そして研究書の類いも結構読んできたものだ(いくら好きだからといってとてもそこまではできないね)。そこで自分なり

の採点をして10傑を選んでみた。通俗かも知れないがそれぞれにはそれなりの思い入れがある。まあ、これが好きだ!それだけ。

1位 バスカヴィル家の犬 …..怪奇な伝説、荒涼たる風景、底なし沼、そして青白い魔犬。舞台装置と言い、二人の活躍といい…。

2位 まだらの紐………………蛇には耳が無いしミルクは飲まない。難点は多いのだがミステリアスな雰囲気がいいんだね。

3位 唇の曲がった男………….アイディアがいいんだね。そしてホームズが阿片窟にいたりして。

4位
 赤毛組合
…………………こんな馬鹿な話は無いのだが、そのアイディアに脱帽だ。三人のガリデブも基本構造は似ていますね。

5位 青いガーネット
…………話の意外性がおもしろい。帽子からの推理、鵞鳥、ケチな小悪党、パブやコベントガーデン市場は当時の

              ロンドンを彷彿させる。当時の下町なんか凄かったのだろう。切り裂きジャックなんか跋扈して….。

6位瀕死の探偵……………….いま読めばけっこう陳腐なんだが小学生のころはそのアイディアに唸りましたね。

7位 踊る人形……………………暗号小説だが、これだけの材料で推理するとは!ポーの「黄金虫」の方がはるかに緻密なんですが….。

             でも人形の落書きが暗号というのがね。

8位 六つのナポレオン……….これもアイディアの素晴らしさ。これ以後この手のやり口が….。本物を目眩ませさせるため大量殺人とか。

9位 ぶなの木屋敷の怪………..物語の出来よりヴァイオレット・ハンター嬢がね。ホームズには何故かヴァイオレットという名前がよく

             登場する。それはホームズの妹の名前がそうだったからだ。「ぼくの妹だったら行かせないね」この一言

             が答えである。当時は教育ある女性の仕事は家庭教師しかなかったのですね。そしてストーリーは何だか

             「ジェーンエア」や「レベッカ」とダブってしまうのですが…。

10位……最後は迷うのです。ホームズがデビューした「緋色の研究」か、あの女性アイリーン・アドラーか、モーンスタン嬢か、ホー

ムズが復活した空き屋か、嗚呼! 迷ってしまいます。

ワーストなら、ほらあれですよ….ホメオパシーかレメディか、ホルモン剤か、またまたバイアグラか。

ホームズから電報が届いた。彼とは「最後の挨拶」以来会っていない。私はホームズと再会できる喜びにサセックスに赴いた。

ホームズはテーブルの上の古びた頭蓋骨を観察していた。「どうしたんだい?その頭蓋事は」。…「いや、鑑定を依頼されたのだ。

最近この近くのピルトダウンで発掘されたものだ。君はどう見るかね」。…「まさか君のじゃあるまいね?モーティーマ医師が昔

ホームズの頭蓋骨を欲しがっていたからね。……相当古いものだが明らかにネアンデルタールではない。眼窟上隆起が少ないし現

代人に近いね。でも下顎骨と合わないね」。…「お見事ワトスン!ぼくも同意見だ。頭蓋冠はホモサピエンスの明らかな特徴を示

しているが、この顎と接合部が不自然だし犬歯や歯並びも奇妙だ。よってこの下顎骨は類人猿のものと推定される。恐らく偽物だ!

しかし何故こんなものを埋めたのか?その動機と人間を推理する方に興味を惹かれるね」。…「疑わしい人もいるんだろ?」。

…「まず発見者が疑われるだろう。弁護士でありアマチュアの考古学者でもあったチャールズ・ドーソンだ。ドーソンは大映博物館

古生物学者ウッドワードのところへ持ち込んだ。そして彼らは再調査し、さらに2本の臼歯のついた下顎骨を発見した。これこそが

ミッシング・リンクである猿人であり、イギリス人の祖先として相応しい大きな頭脳を持っていた!とね。話はここから喧々諤々の

大論争となるのだ。本物だ、いや疑わしい…….。捏造なら犯人が誰か?また何が動機なのか?捏造するには地質学、古生物学、解剖

学の専門的知識が必要だ。疑われしい学者は大勢いるが、ぼくの推理は違う」。…「ぜひ聞きたいね」。…「まず動機だ。一つは大英

帝国が人類学的にも進化学的にも優れているというこの時代風潮と愛国心だね。そして自分が信じることへの批判、これを逆に嘲笑

したいという欲望、つまり愉快犯だ」。…「ホームズ、ぼくには分からないな」。…「ほら君もよく知っているぼくの親戚でもあるチ

ャレンジャー教授だ。彼は「ロスト・ワールド」を探検し、未発表の「人類の起源」論文もある。その出版代理人であるA.C.ドイル卿

には動機があるね。驚くのは無理もないが彼はピルトダウンの近くに住んでいるし、その知識もある。そして自ら信じる進化学や妖精

の存在、降霊術を批判する世間に対する増悪であり嘲笑なのだ」。「彼は医者でもあるし学会の推理力にも挑戦したのだろう。しかし、

結論は急がない方がよいね。将来新しい年代測定方やデータが揃ったときに「完全な偽物」と断定できるだろう。いまぼくの推理を発

表すると学会には冷たい東風になるだろうよ。夢を壊しちゃいけないよ。まだ聖書を信じ進化論は受け入れ難い人々が多いからね。そ

れは常識を混乱させ大英帝国の威信を損なうことになりかねないからだよ」。…..「まあ、概して事件の外見が奇怪に見えれば見えるほ

どその本質は単純なものだ。それを学ぶべきだね。真実への近道なんてあり得ないのだよ。ぼくが発表するより後世に期待しようよ」。

★ 1950年、フッ素法により検査が行なわれ骨が1,500年以内のもので捏造品であると結論された。1953年にはオックスフォード大学の

研究者らによる、より精密な年代測定と調査・分析が行われ、その結果、下顎骨はオランウータンのものであり、臼歯の咬面は人類の

それに似せて整形されていた証拠、古く見えるよう薬品で石器などとともに着色されていた事実、獣骨は他の地域のものである事なの

である。詳しくは「ピルトダウン」F.スペンサー著 山口敏/訳:みすず書房(1996)…犯人は誰か?興味津々読み応えある本だ。

★ 2000年、日本で旧石器捏造事件があった。東北旧石器文化研究所の副理事長が、30年近くに渡って縄文時代の石器を3万年以上前の

地層に埋め、それを掘り出して日本の前期旧石器時代の存在を創作し続けていたのである。彼は「神の手」と呼ばれていた。ピルトダウ

ン人事件に相通じるところがある。

★ 西洋絵画にはヴァニタスという寓意的静物画のジャンルがある。「人生の空しさの寓意」を表す頭蓋骨を置き人間の死すべき定めを

暗示し、虚栄のはかなさを喚起させる。頭蓋骨は黙して語らない。

★モーツアルトの頭蓋骨というのもある。DNA鑑定の結果、偽物であると判定された。(ネットに写真がありますよ。検索してみて)

★マッシモ・ボンテンペルリの「頭蓋骨に描かれた絵」奇妙な味の短編である。

★ 落語に「頼朝公御十四歳のみぎりの髑髏」というのがある。大頭として有名な源頼朝の頭蓋骨だといって売ろうする男に、客がそれに

しては小さいではないかというと、「十四歳のみぎりのしゃれこうべ」とね。

何十年かぶりに「白鯨」を読み直してみて、ジョン・ヒューストン、脚本レイ・ブラッドベリ、主演グレゴリー・ペックの「白鯨」

(1956年)の印象が強く残っている自分を発見した。随分脚色してあるのだブラッドベリが。そのイメージで読んでしまうんですね。

どうしても映像の方が印象が強いのだ。原作ではエイハブが白鯨の背で手招きなんかしないのに…。日本でも「鯨神」(1962)年と

いう映画があった。監督: 田中徳三、脚本: 新藤兼人、原作: 宇能 鴻一郎(あの「わたし…しちゃたんです」。のあの人ね)、主演は

勝新、本郷功次郎、藤村志保、江波杏子だったっけね。それなりに面白かったよ。

過日米国東海岸を旅したことを思い出した。ボストン、ニューベッドフォード、ニューポート、ケープコッド、そしてナンタケット。

またナンタケットレッドという錆びたような紅色の独特の赤色がある。褪せたキャンバス地のショーツなんかデッキでそれはもう素敵

に映えるのだ!まるで鯨の血で染めたのか?と思ってしまう。

また日本の捕鯨に対して世界中がかまびすしい。シーシェパードの行動なんかテロリストに近いものがある。「鯨は賢い動物だから….」

「じゃ、世界中で戦争して人間を殺しているじゃないか」。「環境保護の象徴」「それは分かる。でも…」。「かってアメリカこそ捕鯨

王国だったし白鯨が描くのも鯨讃歌だ。そして日本に開国を迫ったのも捕鯨じゃないか。ペリーが黒船を率いてね」「時代が変わったの

だよ。いまさら鯨を食べなくても…」「じゃ牛や豚ならいいのか….」論議は果てがない…。思い出すよ、敗戦後子どものころ飢えて飢え

て…唯一のタンパク質が鯨だったのだ。南氷洋に出航する図南丸とキャチャーボートの活躍をニュース映画で見て心を踊らせたものだ。

そして乾物屋の店先に真っ黒になった鯨肉があって、蠅取り紙が物憂に廻っていたっけ….。鯨食肉は文化だと声高に喋る人がいるが、

尾身にしてもハリハリ鍋にしても、コロもオバケもいま食べてみると別段美味しいとも思わない。鯨は食べるものから愛でるものに変わ

ってきたんだね。鯨はデカイ。大きいだけで人間は驚異と畏怖を感じる。戦艦大和、スカイツリー然りですね。

まあ、見て下さい。名前はPonta。

もらってきた時は白く小さな普通の子猫だった。

ところがトンでもなく餌を食べる。キャットフードの袋なんか1日で無くなるのだ。

調べてみたらジャイアント・ノルウェージャン・フォレスト・キャットの変種だそうだ。

どうもスノー・レパードの血が混ざっているのかもしれぬ。極めておとなしく甘えん坊だが、ご近所のシェパードや

ドーベルマンをネズミ代わりに襲おうとするので外出禁止だ。とにかく、もう!持ち上げるのも一苦労だ。