Archive for the ‘S.Holmes Diogenes Club’ Category


さる昔、倫敦・トッテナムコートの寂れた骨董屋でこの絵を見つけた。埃を拭ってみると端正な男の肖像ではないか。どこかで見た事

がある顔だ。そう、あの世界初の諮問探偵シャーロック・ホームズではないか。嬉しくなって因業な親父と交渉、値切に値切って手に

入れた。どうせ偽物だろうサ、そうに決まっている。….イコノロジーなどと大袈裟なものではないが学者の友人にも頼み分析を試みた。

まずキャンバスと木枠、ともに相当古く一世紀は経っているだろう。炭素C14による年代測定では1899年誤差5年と出た。また絵具によ

る時代測定も当時の顔料であると分析された…..。ということは100年前の材料を見つけてきて現代に描いたものだろうか。いや本当に

当時に描かれたものか?….謎は深まるばかりだ。まず、この肖像画の男はあまりにも聖典通りである。秀でた額、鷲鼻、尖った顎、長

い指、パイプ、微かに左隅にはストラディバリらしきものも見えるではないか! 当時は肖像画の時代だ。何かの記念に描いたもので

はないか? もしかしたらホームズがレジオン・ドヌール勲章を受章した時か、それとも1900年サーの称号云々の時か。ホームズが辞

退し絵だけが残った? 絵から読み解けば年齢から見て40代の顔である。恐らくライヘンバッハの滝から3年の時を失踪、その帰還後だ

ろう。なぜなら思索に耽る時に両手を合わせるのは、彼がチベットのラサでダライ・ラマと親しく会話してからその癖がついたという。

それでは肝腎の画家は誰か?出版代理人の父親?またリチャード・ドイルとは明らかに世界が違う。それではシドニー・パジェットか?

彼なら描いただろう、しかしタッチが違うし油絵を描いた記録もない。それとも当時の無名の肖像画家か? いやワトスンか? …彼に

は文学的才能はあるが芸術的センスはないし、まして絵筆を握るなんて….。不可能なことを排除していけば、そこに残ったものが、どん

なに信じ られないようなことでも、真実なのだ。….. 推理と熟考の末、ホームズ本人が描いた自画像であろうとの結論に至った。

そのためには決定的な証拠が欲しい。X線による鑑定、そして汚れを丹念に落としてみれば何と署名が出て来たではないか。

S.Hoaksとある。ははーん、これこそ彼のやりそうなことだ。ホームズに発音が似ているしHoaksは、Hoax(でっち上げ)である。

ホームズは芸術家ヴァルネの血を引き画才もある。ヴァイオリンも巧みに演奏する。だが一抹の疑問がある。どことなく現代のホームズ

役者ジェレミー・ブレットに似ている気がしないでもない。いやいやそれは反対、彼はホームズに似せてメーキャップと役作りをしたの

だから似るのは当たり前だろう。まあ、贋作云々を論議してもはじまらないが……。とにかくFoaxを楽しむことに尽きるのだよ。

世の中にはとんでもないその道の大家がいるもので、シャーロッキアン達はその典型だろう。架空の人物をここまで深く研究し夥しい

論文を発表し続けているのだ。恐らくシェィクスピア研究以上ではないだろうか。カノン(聖典)60編、せいぜい鞄に入る量でしかな

いが、研究書なら部屋一杯になるだろう。ぼくは純粋のシャーロッキアンではないが、なぜか子どものころより強く惹かれ何回再読し

ただろう。そして研究書の類いも結構読んできたものだ(いくら好きだからといってとてもそこまではできないね)。そこで自分なり

の採点をして10傑を選んでみた。通俗かも知れないがそれぞれにはそれなりの思い入れがある。まあ、これが好きだ!それだけ。

1位 バスカヴィル家の犬 …..怪奇な伝説、荒涼たる風景、底なし沼、そして青白い魔犬。舞台装置と言い、二人の活躍といい…。

2位 まだらの紐………………蛇には耳が無いしミルクは飲まない。難点は多いのだがミステリアスな雰囲気がいいんだね。

3位 唇の曲がった男………….アイディアがいいんだね。そしてホームズが阿片窟にいたりして。

4位
 赤毛組合
…………………こんな馬鹿な話は無いのだが、そのアイディアに脱帽だ。三人のガリデブも基本構造は似ていますね。

5位 青いガーネット
…………話の意外性がおもしろい。帽子からの推理、鵞鳥、ケチな小悪党、パブやコベントガーデン市場は当時の

              ロンドンを彷彿させる。当時の下町なんか凄かったのだろう。切り裂きジャックなんか跋扈して….。

6位瀕死の探偵……………….いま読めばけっこう陳腐なんだが小学生のころはそのアイディアに唸りましたね。

7位 踊る人形……………………暗号小説だが、これだけの材料で推理するとは!ポーの「黄金虫」の方がはるかに緻密なんですが….。

             でも人形の落書きが暗号というのがね。

8位 六つのナポレオン……….これもアイディアの素晴らしさ。これ以後この手のやり口が….。本物を目眩ませさせるため大量殺人とか。

9位 ぶなの木屋敷の怪………..物語の出来よりヴァイオレット・ハンター嬢がね。ホームズには何故かヴァイオレットという名前がよく

             登場する。それはホームズの妹の名前がそうだったからだ。「ぼくの妹だったら行かせないね」この一言

             が答えである。当時は教育ある女性の仕事は家庭教師しかなかったのですね。そしてストーリーは何だか

             「ジェーンエア」や「レベッカ」とダブってしまうのですが…。

10位……最後は迷うのです。ホームズがデビューした「緋色の研究」か、あの女性アイリーン・アドラーか、モーンスタン嬢か、ホー

ムズが復活した空き屋か、嗚呼! 迷ってしまいます。

ワーストなら、ほらあれですよ….ホメオパシーかレメディか、ホルモン剤か、またまたバイアグラか。

ホームズから電報が届いた。彼とは「最後の挨拶」以来会っていない。私はホームズと再会できる喜びにサセックスに赴いた。

ホームズはテーブルの上の古びた頭蓋骨を観察していた。「どうしたんだい?その頭蓋事は」。…「いや、鑑定を依頼されたのだ。

最近この近くのピルトダウンで発掘されたものだ。君はどう見るかね」。…「まさか君のじゃあるまいね?モーティーマ医師が昔

ホームズの頭蓋骨を欲しがっていたからね。……相当古いものだが明らかにネアンデルタールではない。眼窟上隆起が少ないし現

代人に近いね。でも下顎骨と合わないね」。…「お見事ワトスン!ぼくも同意見だ。頭蓋冠はホモサピエンスの明らかな特徴を示

しているが、この顎と接合部が不自然だし犬歯や歯並びも奇妙だ。よってこの下顎骨は類人猿のものと推定される。恐らく偽物だ!

しかし何故こんなものを埋めたのか?その動機と人間を推理する方に興味を惹かれるね」。…「疑わしい人もいるんだろ?」。

…「まず発見者が疑われるだろう。弁護士でありアマチュアの考古学者でもあったチャールズ・ドーソンだ。ドーソンは大映博物館

古生物学者ウッドワードのところへ持ち込んだ。そして彼らは再調査し、さらに2本の臼歯のついた下顎骨を発見した。これこそが

ミッシング・リンクである猿人であり、イギリス人の祖先として相応しい大きな頭脳を持っていた!とね。話はここから喧々諤々の

大論争となるのだ。本物だ、いや疑わしい…….。捏造なら犯人が誰か?また何が動機なのか?捏造するには地質学、古生物学、解剖

学の専門的知識が必要だ。疑われしい学者は大勢いるが、ぼくの推理は違う」。…「ぜひ聞きたいね」。…「まず動機だ。一つは大英

帝国が人類学的にも進化学的にも優れているというこの時代風潮と愛国心だね。そして自分が信じることへの批判、これを逆に嘲笑

したいという欲望、つまり愉快犯だ」。…「ホームズ、ぼくには分からないな」。…「ほら君もよく知っているぼくの親戚でもあるチ

ャレンジャー教授だ。彼は「ロスト・ワールド」を探検し、未発表の「人類の起源」論文もある。その出版代理人であるA.C.ドイル卿

には動機があるね。驚くのは無理もないが彼はピルトダウンの近くに住んでいるし、その知識もある。そして自ら信じる進化学や妖精

の存在、降霊術を批判する世間に対する増悪であり嘲笑なのだ」。「彼は医者でもあるし学会の推理力にも挑戦したのだろう。しかし、

結論は急がない方がよいね。将来新しい年代測定方やデータが揃ったときに「完全な偽物」と断定できるだろう。いまぼくの推理を発

表すると学会には冷たい東風になるだろうよ。夢を壊しちゃいけないよ。まだ聖書を信じ進化論は受け入れ難い人々が多いからね。そ

れは常識を混乱させ大英帝国の威信を損なうことになりかねないからだよ」。…..「まあ、概して事件の外見が奇怪に見えれば見えるほ

どその本質は単純なものだ。それを学ぶべきだね。真実への近道なんてあり得ないのだよ。ぼくが発表するより後世に期待しようよ」。

★ 1950年、フッ素法により検査が行なわれ骨が1,500年以内のもので捏造品であると結論された。1953年にはオックスフォード大学の

研究者らによる、より精密な年代測定と調査・分析が行われ、その結果、下顎骨はオランウータンのものであり、臼歯の咬面は人類の

それに似せて整形されていた証拠、古く見えるよう薬品で石器などとともに着色されていた事実、獣骨は他の地域のものである事なの

である。詳しくは「ピルトダウン」F.スペンサー著 山口敏/訳:みすず書房(1996)…犯人は誰か?興味津々読み応えある本だ。

★ 2000年、日本で旧石器捏造事件があった。東北旧石器文化研究所の副理事長が、30年近くに渡って縄文時代の石器を3万年以上前の

地層に埋め、それを掘り出して日本の前期旧石器時代の存在を創作し続けていたのである。彼は「神の手」と呼ばれていた。ピルトダウ

ン人事件に相通じるところがある。

★ 西洋絵画にはヴァニタスという寓意的静物画のジャンルがある。「人生の空しさの寓意」を表す頭蓋骨を置き人間の死すべき定めを

暗示し、虚栄のはかなさを喚起させる。頭蓋骨は黙して語らない。

★モーツアルトの頭蓋骨というのもある。DNA鑑定の結果、偽物であると判定された。(ネットに写真がありますよ。検索してみて)

★マッシモ・ボンテンペルリの「頭蓋骨に描かれた絵」奇妙な味の短編である。

★ 落語に「頼朝公御十四歳のみぎりの髑髏」というのがある。大頭として有名な源頼朝の頭蓋骨だといって売ろうする男に、客がそれに

しては小さいではないかというと、「十四歳のみぎりのしゃれこうべ」とね。

「ホームズ、この絵は君が描いたのかい?」「いや今朝届いたのだ」。わたしは早速ホームズのやり方で推理してみた。

「これは描いたものではないね。紙を鋭利な刃物でカットした切り絵だ。このような切り絵はフランスのシルエットが広めたという

が技法が違うようだ。おや?ittetsuというサインがあるぞ。作者というのが妥当だが、「緋色の研究」のこともあるしit tetsuと読め

ば聖書のテトス、いやあの凱旋門で有名なローマ皇帝のテトウスだろうか?….ホームズへのオマージュだよ」。

「ブラボー!ワトスンよくやったよ。だが間違った推理はより間違を拡大しやすいものだ。1枚の絵の情報から何を推理するかは的

確な観察、細部にこそ宿っているのだよ。まず紙は当たり前の上質紙だが英国のものではない。左向きの横顔、このショールカラー

の曲線は明らかに右利きの手で切った特徴を表している。ぼくのことを相当研究しているようだが、男優ウィリアム・ジレットにモ

デルを求めたのだろうか。でもパイプの型が異なるし、またぼくのファッション・コーディネイターであるシドニー・パジェットの

微かな影響を見るね。そしてこの輪郭線と色使いは浮世絵の流れを汲んでいる。作者は間違いなく日本人だ。サインのIttetsuのitはす

なわち一だ。tetsuは鉄または徹、硬く筋道を通すという意味だ。よく似た虎徹という名刀もあるし鋭利な刃先は日本刀の切味だろう。

これらの鉄の芸術品はウォレスコレクションで見る事が出来るよ。さらにここにはぼくの先祖である芸術家ヴァルネの絵もあるよ。

この絵の包装紙に微妙なアルコールの匂いがする。パブで一杯飲りながら包んだのだ。そこから中年の酒好きの男だ。この左隅の薄

いシミは明らかにスコッチの一滴だ。ぼくがスコッチ140銘柄を見分ける論文を書いたのは知っているだろう。滲み具合、色合い、匂

いからフェイマスグラウスのソーダ割りだ」。……..おや、ドアを開けてくれたまえ。ご本人が登場したようだよ。

★1890年代を「藤色の時代・モーブナインティーズ」とも呼ぶ。そこでホームズは「青いガーネット」で 紫色の化粧着で登場する。

この化粧着姿は「コリアーズ」の表紙にもなった。 この紫だが1856年にウィリアム・パーキンはコールタールからアニリンの染料を

発見した。このモーヴと名づけられた物質が世界初の合成染料である。ホームズもコールタール誘導体の研究をしていたから案外と

言いたいところだが、残念ながら時代が合わないね。しかしホームズのことだ、より効率的製法を発見したのかも知れぬ…..。

「バリツ」この不思議な響きは何を意味するのであろう。時は1891年5月4日。所はスイス・ライへンバッハの滝。轟々と落下する大量

の雪解け水は耳を聾し、濛々と立ち上る水煙は視界を霞ませ、目もくらむような隘路で戦う二人の姿があった。シャーロック・ホーム

ズと宿敵モリアーティ教授である。二人は滝壺の深淵へと消えたという 発表に世界中のファンは悲嘆に暮れた。 しかし約3年の時を経

てホームズは復活する。「ぼくには日本のバリツの心得がいささかあった」とホームズは言うのだが….。さてバリツとは何だ?ブジュ

ツの訛か、それともそんな格闘技があったのか?様々な説があるのだが、W・バートン・ライトによって紹介された日本の護身術「バ

ーティツ・Bartitsu」だとか、嘉納治五郎による講道館から世界に広まった柔道であるとか、いやあれは相撲の「いなし」であるとか、

いや合気道の一手だとか喧しい。しかしホームズが相当な使い手である以上、相当若い頃から鍛錬していなければならぬ。ワトスン博

士はそれについてどこにも記述しておらぬし、彼と知り合う前でなければ辻褄が合わないのだ。つまり彼等が出会う1881年以前の若き

ホームズの姿である。 大英図書館で化学と犯罪学を研鑽していたことは確かなのだが、たぶんその頃のことであろう。ここに一つのヒ

ントが隠されていたのだ。渡英日本人による 19世紀末か20世紀初頭と思しき時代に描かれた絵、日記、写真が残されていたのだ…..。

さてこれからは眉に唾を塗って涼しげに読んでいただきたい。……その男は【成田山一徹斎・なりたさんいってつさい】嘉永七年(18

54)江戸谷中生、家業は絵師、幼少より神田於玉ヶ池、磯又右衛門正足道場にて天神真楊流の皆伝。柔よく剛を制すとして柔術・棒術

の真髄に迫らんと日夜の鍛錬を行う。時代は黒船、勤王攘夷、御維新と疾風怒濤の時代を越え明治となった。ワーグマンに師事し彼の

推薦により、明治11年(1878)絵画研修のため渡英。その頃の日記には「われ大英図書館に通ううち様々な英才との知古を得た。その

人はドイツ訛りで豊かな髭を蓄えまるさすえんげるすを根底とする新思想に燃える男。そして化学と犯罪史に異常な興味を示す青

に出会った。長身痩躯、人を射るような鋭い灰色の眼、鷲のような鼻、鋭敏で理知に満ち、我が輩が古武術を使うと知ると熱心に教

を請うのだった。我が輩も厳しく鍛えるうち、彼の稀に見る才により一年あまりで目録、二年目には我が輩も油断すると一本取られ

るほどに上達した。特に秘伝である馬慄(馬をも怯ませ投げ飛ばす術、罵詈津とも書く)の奥義も伝えた。….」とある。

一徹斎は三年後に帰国、帝国大学で西洋絵画史の教鞭を取る。1891年ホームズの訃報を聞くに大いに落胆、その復活には狂喜乱舞した

と聞く。20世紀初頭に再び渡欧、サセックスの地に赴きホームズと旧交を温める。たぶんその時に撮した写真ではないか?と一徹斎の

曾孫である成田一徹氏は語る。最も劇的なシーンを描きホームズに贈ったのであろう。まあ、信じようと信じまいと勝手だが…….

★さる日、シャーロック・ホームズ・クラブ・ウエスト・エンド「仏滅会」の会合を覗いてみた。扉を開けた瞬間、会長の平賀三郎氏

を始め炯々たる眼差しの十数人。ウム、これは!?と身構えてしまった。中には粋に和服を着こなした妙齢のご婦人方さえ見えるでは

いか!バイオレット嬢ならぬ紫婦人か!そして「まだらの紐」関する考察、「バスカビル家の犬」の実地検証報告となかなかの内容

だった。知人より「胆を据えて参加なさるがよい」と注意はされてはいたのだが…。わが貧弱なる知識ではと恥じ入った次第だ。二次

会の呼称は「ディオゲネス・クラブ」。一切口を聞いてはならぬとホームズの兄マイクロフトの創立した人嫌いの集まり倶楽部だ。

小生気を引き締めて参加したのだが、各員喋るは喋るは!大シャーロッキアン大会である。まあ、大人のお遊び、架空の人物について

これだけの研究と楽しみがあるとは!入会を誘われたのだが、聖典(カノン)60編を再度読破してから考えよう。

「タイトルの綴りが間違っているぞ、beeではなくbeだよ。文学の知識なしだね、ホームズ」。

「初歩だよ、ワトスン君、ぼくが引退して何をやっているか知っているだろう。実用養蜂便覧、付・女王蜂の分封に関する緒観察を

読んでほしいものさ、だからBeeでいいんだよ」。

おもしろい男に会った。蓬髪巨体、さる大学の教授様なのだが英文学の研究と仰せられる。シェイクスピアかブロンテかと訪ねると、

庶民の歴史なんだと…。思わず膝を乗り出しましたね。得てしてこの手の顔に童心をかいま見るのでルイス・キャロルかも知れん。

何しろ笑顔がチシャ猫的である。じゃ、あの探偵は?と問うと破顔一笑、ウィスキーをグッと飲み干し、したり顔で宣う。最近さる

会合で「なぜホームズはライヘンバッハの滝に落ちたのか…アルプスをめぐる想像力」と講演をしてきた。いるんだ時々、こういう

オジさんが。ベーカーストリート・イレギュラーズがそのまま大人になった男だ。嬉しくなってきますね。

ぼくは隠れシャーロッキアンなのだが研究倶楽部にも入っていないし、ロンドンも上ッ面しか知らない。でもガス灯と霧にむせぶ19

世紀の倫敦を想像するだけで楽しくなる。文学者でジャーナリストのW・コベットは倫敦を「グレイト・ウェン(オデキの親玉)」

と言ったとか。その闇のなかでで世界初の諮問探偵が活躍するなんて…。何しろシャーロック・ホームズが快刀乱麻の推理力で解決

する話は何回読んでも尽きせぬ魅力がある。聖典(カノン)を克明に読み解き新発見と新説を論じていく。架空の人物でありながら、

これほど実在感のある人もいませんね。まあ、何しろ英国民謡の「埴生の宿」でも歌われているのだから。

〜 There’s no place like home 〜 だが、これが間違い。正しくは 〜 There’s no police like Holmes 〜 だ。

SH架空の人物でありながら、これほど実在感のある人物がいるだろうか。そう、シャーロック・ホームズだ。子供の頃から何度読み直し

ただろう。シャーロキアンはこれら60編をカノン(聖典)と呼ぶ。霧のロンドン、ガス灯に浮かぶシルエット。ディアーストーカー

(鹿狩帽)にインバネスコート(日本では衿にラッコの毛皮をつけて和服のコートとして、そうトンビだ)。これは挿絵画家シドニー

・パジェットが作った。いつのまにかホームズといえばこのスタイル、ホームズ俳優としてはジェレミー・ブレット(彼はマイフェア

レディでにやけた兄ちゃんを演っていた)が最高だね。イメージぴったし。ホームズは1854年1月6日生まれ、大英帝国華やかなりし頃、

ヴィクトリア時代の犯罪捜査の天才にして複雑な内面を持ち倦怠と行動の矛盾だらけの人物。麻薬に浸り、ストラディヴァリで内観す

るメランコリア、法律を無視し、イデアリストで、バリツ(日本武術)を使い…。

こういう人ってHFA/ASP「高機能型アスペルガー症候群」の天才じゃないの?だれか大脳生理学者か心理学者の先生、分析してみて。

上記の絵は我が友、成田一徹氏の作品だ。彼とバーのカウンターでホームズについて語るとき、「世の中に闇がなくなったね。いかが

わしい匂いと生臭い人間と、陰翳というか闇の部分がサ」「TVもイラストもお子様ランチみたいだ。作った明るさだ。ユルキャラとか

媚びの氾濫だね」。近代工業化社会という資本家と搾取…120年前のロンドン超格差社会、ホームズが通った大英図書館の隣の席にカー

ル・マルクスがいた?現代日本の不況感と格差感…。「いやいや心の闇はハイテク化するほど深くなるんじゃない?」「でもケータイ依

存症というのは、孤独で寂しいというメッセージを共有していたい、友達ゴッコじゃない?明るく装いたいんだよ」…ブログで発信する

のも「僕はここにいるヨッ!」って孤独者の必至の叫びかも知れないね。ウーム、もう一杯飲も!